第3章 買ってあげたいと思われる人になりなさい
◆「この人のためにがんばろう」と思える人
私には、仕事をするようになってとても大切にしたいと思える存在ができました。それは、私が所属する山形支店の女性支店長、山川支店長です。家族以外で「この人のためにがんばりたい」と思える人ができたことは、社会人になった私にとってとても幸せなことだと思います。
前にお話しした通り、山形支店は私たち1期生の入社とともに新しくできた支店です。そのとき初めて支店長になった山川支店長と、まったくの新人だった私たちは、まるで家族をつくるようにゼロからスタートしていきました。
山川支店長は一見すると怖~いお姑さんのような人。電卓が似合う、老眼のめがねをかけた口の悪いおばあちゃんです。
私が入社した時から現在まで、私はよく山川支店長に「久美子なにやってんだ!」と怒られています。怒ることも褒めることも、心からしてくれるとても暖かい人で、私は山川支店長が大好き!まるでお母さんのような存在なのです。新人の頃には、始発の新幹線に乗るために出勤し、寝ぼけながら思わず「お母さーん」と呼んでしまったことも!
私は嬉しかったことや悲しかったことがあると、いつも山川支店長に話を聞いてもらっています。
「今日は東京バナナでよー、お土産に一つ届けに行ったら足りないから、じゃああと3つ持ってきてっていわれて四つも買ってもらったんだ」
そうすると山川支店長はやさしく、
「んだかー、良かったなー、良かったなー」
といってくれます。私が働いていて感じること、消化できないこと、それらをすべてやさしく包み込んでくれる人なのです。
そんな山川支店長とも、以前、仕事で衝突したことがありました。
私にはとても好きなシフトがありました。それは朝7時台に山形を出発し、夜の11時に山形へ戻ってくるまで山形ー東京間を2往復するというもの。お客さまの雰囲気や客層は、曜日や時間帯によって大きく変わってきます。このシフトだと朝、昼、夕方、夜と違う時間帯の新幹線を味わうことができるので、ハードではありましたがとてもやりがいがあったのです。
しかしそのシフトを、東京支店が受け持つことになってしまったのです。とても好きで、そのぶん売り上げも上げていた時間帯だったので、私はすぐに山川支店長に泣きつきました。
「私、辞めます!東京営業所に転勤する!」
もちろん、一介の販売員が転勤を決めることなどできるはずもありません。当然、山川支店長も親以上に真剣になって怒ってくれました。
「お前バカか!いま一時のことを考えるな。いま、山形でがんばっててお前はすごく輝いてる。でも東京なんか行ってみろ。たくさんの人に埋もれて、お前の個性が黒ずんでしまうよ」
そのとき山川支店長は、私を星に例えて説得してくれました。確かに東京は星の数ほど人がいて、いまここで素敵な人たちに囲まれてのびのび仕事をしている私が、東京でも同じようにがんばれるかはわかりません。
それに、乗る列車は変わってもお客さまが変わるわけじゃない。お客さまとの出会い、仕事のやりがいは何も変わらないのです。
すぐに「私は何てことをいってしまったんだろう」と思いなおし、「やっぱり私、東京に行かない」といいました。
そんな私を山川支店長は優しく受け入れてくれて・・・・くれることもなく、「もうお前なんかどこえでも行ってしまえ!!」と捨てゼリフを投げつけられてしまいました(笑)。最後は私が「これからもよろしくお願いします」と謝って、どうにかことは収まったのですが、いま思い出してもヒヤヒヤの出来事でした。
私がチーフインストラクターとなったいまでも、心から私のことを思って怒ってくれるーーー。そんな上司に恵まれたことは、とても幸せなことだと思っています。