私が販売員の仕事を始めた頃から、よく気に掛けていただいていた常連のおじいちゃんがいます。3章で書いたフランス旅行を懸けたワインの企画のときも、とても応援してくれた方です。フランス旅行のことまで話したかは憶えていませんが、「いまね、ワインをたくさん売ろうと思って頑張っているんだず」とお話したのでした。
それからそのおじいちゃんは、会うたびに1本か2本、ときには3本もワインを買ってくださるようになりました。ご本人はお酒を飲まれないそうで、いつもお土産にと買ってくださいます。フランス旅行を獲得できたのもおじいちゃんのおかげだと、本当に感謝しています。
このおじいちゃん、私が仕事を始めた頃から私のファンになってくださっていて、よく写真を撮ってもらいました。まだ初々しい新人の頃や、視野内販売で笑っている表情、デッキでおすまししているところなど、たくさんの写真を撮っては、次に会ったときに渡してくれるのです。
いつ会えるのかわからないので、きっといつもバックのなかに入れてくれているのでしょう。丁寧にティッシュに包んである写真をいただくと、「ああ、ほんとうにいつも気に掛けてくれているんだなあ」と嬉しくなります。
以前には「フランス旅行に行ってくるんだ」といってお土産を買ってきてくださったこともありました。
「お土産を買ってくるから、楽しみにしてなさいよ~」
「いやいや、そんな。気持ちだけでありがたいです。無事に帰ってきてくださいね」
そんなふうに謙虚にしてはみたものの、(どんなもの買ってもらえるんだろう)なんてちゃっかり考えていたり(笑)。そのあとしばらくしてお会いしたとき、とても素敵なネックレスをいただきました。
仕事を始めて10年。20歳だった私も三十路になり、同じようにおじいちゃんもお年を取られました。最近では「腰が痛くて」といいながら杖を突いて、「ああ、ずいぶんお年をめしたんだな。いつまでも元気でいてほしい」と強く思ったものです。
いつまでも元気で東京へ行って、無事に山形に戻ってきてほしい。そしていつまでも茂木久美子のファンでいてほしいと思っています。